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スワミジの伝記 1-09(『Swamiji The Manifestation』より)

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最初の周期(1942-1954) サティアナーラーヤナ第9話

 1953年のシヴァラトリ(シヴァ神を特別に祀る聖なる日)のころ、ジャヤラクシュミーの出産日が近づき、夫の姉妹のヴェーンカンマが出産に立ち会うためにやってきた。ヴェーンカンマは厳格なヨーギニであり、ジャヤラクシュミーは子どもたちに、おばがなにを実践しているかやさしく伝えようとした。ヴェーンカンマにとって、沈黙のなか瞑想とチャンティングのみを行うシヴァラトリは特別な日だった。  

 その聖なる日の夜、ヴェーンカンマは瞑想をしようと炊事場に向かった。そこで彼女は完全に、深い熟考のレベルへと達した。サティアナーラーヤナはマットの上で休みながら、近くの寝台に横たわる母親を見つめていた。少年の姉妹たちはでに眠りについていた。すると突然、部屋の空気感が変わり、あらゆる思いが少年の心を離れた。サティアナーラーヤナにはなにが起こっているか理解できなかった。

 シヴァラトリの日には、シヴァリンガムに水を灌ぐ神聖な儀式アビシェーカムを行いながら、夜通しシヴァを祀るのが習わしとなっている。リンガムは宇宙黄道の卵形をした像であり、万物に影響を与え、絶対的で目に見えず形のない神であるシヴァを象徴している。この神聖な夜の最中、サティアナーラーヤナと母親が沈黙し瞑想を行っており、まさにシヴァ神が現れたであろうその瞬間、 ジャヤラクシュミーは突然起き上がり、部屋から外へ出ていった。少年は母親を追ってアンジャネーヤ(半神半猿で、叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する、ラーマの臣下である有名なハヌマーンの別名)寺院の方へと進んでいった。至聖所に入ると、ジャヤラクシュミーはいつもと違って神の前で手を合わせず、身を屈めることもなく、ただ端に寄って息子を偶像の前に立たせた。

 母親の背中を追って聖なる場に足を踏み入れたサティアナーラーヤナは、「この神はシヴァ神の化身だ!」と思った。アンジャネーヤ神の偶像をじっと見つめたあと、少年は床にひれ伏した。少年が体を起こす前に、ジャヤラクシュミーが右手のひらを彼の頭の上に押し付けた。即座に、サティアナーラーヤナは意識を失った。すぐに我に返るが、神的な力が自分のなかに入り、不思議な力が広がっていく感覚を覚えた。まるで全世界が祝福に満ちているようだった。サティアナーラーヤナは内的な没入と外的な気づきのあいだを行き来している状態だった。このふたつの段階のあいだで揺れ動くなか、母親は息子にマントラを唱えさせた。祝福によって伝達した神的な力を息子が完全に受け取っているのがわかり、ジャヤラクシュミーは歓びにあふれていた。

 「私がカラパートラ・スワミから授けられたヴィディヤ(至高の知識)の本質を、あなたに伝達しました」と彼女は息子に言った。サティアナーラーヤナは母親の前にひれ伏した。  

 体を起こし、母親の前に立った彼は、「多くの疑問が晴れましたが、まだ多くの質問があります」と口ごもった。

 「疑問を言ってみなさい」と母親は答えた。

 サティアナーラーヤナはジャヤラクシュミーにいくつか質問を投げかけた。

 「これらの質問に対する答えはひとつであり、同じです。“私は何者か?”という問いですね?」と母親は答えた。

 少年は「僕の葛藤は、そのことだけです。どんな歓びも私には満足できないのです、お母さん! どうか私を完全に祝福してください!」と言って、泣きはじめた。あまりの動揺に、彼は再びその場に崩れ落ち、母親の足元に頭を垂れた。

 ジャヤラクシュミーは愛情を込めて彼を立ち上がらせ、「愛おしい息子よ、ふたつの理由で、私は歓びに満ちています。ひとつは、私の力があなたのものになったからです。もうひとつは、この上なく幸福な状態でも、あなたが平静を失っていないからです。あなたは本当に幸運です。どうぞ長生きされますように!」と言った。

 ここまで話をしたあと、母も息子も押し黙り沈黙が訪れた。サティアナーラーヤナは、母親に言葉にどう答えればいいか、わからなかった。しばらくして、ジャヤラクシュミーが自分のではない声で再び話しだした。 「おお、息子よ! イニシエーションは完全に終わりましたが、あなたが何者であるか、私があなたに教えることはないでしょう。あなた自身が実感するべきなのです。経験を通し完全にそれを会得するためには、聖なるサムスカーラ(現世や過去世での行動や考えによって作り出された、心に生じる印象)と、そのまっさらな記憶が必要です。今からあなたにそれらを授けます。自身が何者であるか、わかるようになるでしょう」

 そう語る母親をサティアナーラーヤナは近くで見ていた。驚いたことに、ジャヤラクシュミーの頭の上に、金色の冠が宝石のように輝いているのが見えた。そして、彼女が突然大きくなっていくように思えた。寺院いっぱいに広がり、さらには壁を超えて空へと広がっていった。母親の姿が変わっていくのと同時に、自分自身も大きくなっていることに少年は気づいた。  ゆっくり、ジャヤラクシュミーの外見が変わりはじめた。額の真ん中で第三の目が光り輝きはじめ、3本の聖灰の線が現れた。母親の顔立ちがこれまで見たことのない美しさに輝いているのを見て、サティアナーラーヤナは圧倒された。目、鼻、唇、歯、耳、顔のパーツすべてが、光に満ちているようだった。彼女の体に目をやると、腕が4本になっていることに気づいた。2本の腕を上げ、突き棒※9と輪縄を手にしていた。もう2本の腕は下げ、新鮮なサトウキビの弓と可憐な蓮を持っており、保護の象徴であるアバヤムドラーを指で結んでいた。  

 母親は緑色のサリーに身を包み、さまざまな宝石と装飾品で着飾っていた。9つの異なる宝石が散りばめられた、黄金の玉座に座っていた。ジャヤラクシュミーの足元には、精妙体の無数の白鳥が集まりだした。サティアナーラーヤナは聖母に行うように、母親の輝く足元のまわりを心の中で巡った。彼の霊性はしだいに白鳥に溶け込み、彼女の足元で安らぐうちに、自身の感覚のすべてを失った。

 その状態にどのくらいいたのか思い出せなかったが、意識を取り戻したとき、サティアナーラーヤナは寺院に戻っていた。母親はまだ女神の姿で金の玉座に腰を下ろしていたが、すべてが普通の大きさに戻っていた。輝く御座から、彼女はやさしく少年に微笑んだ。彼女の顔に目を向けると、自分のアナーハタチャクラ(ハートチャクラ)からプラナヴァ(原初の音オーム)が鳴り響くのを聞いた。その神秘の音の波動が寺院を満たし、石壁に反響した。すると、その音波が、よく知られたお祈りのリズムを穏やかに刻みはじめた。

Sphurati yat rupam anuttamam
Jayati yac ca jaganmayam ambike
Ubhayam etad anusmaratam satam
Abhayada varada bhavati sada

「おお、母よ! 一方ではいつもの美しい姿が、もう一方では天上の姿が見えます。その両方の姿を真に永遠に崇拝する者たちのために、彼らの恐れを取り去り、恩恵をお授けください」

 その音を聴いているうちに、サティアナーラーヤナのマインドは完全に鎮まった。母親の前で粛として座っていると、徐々に彼女は、人間の姿へとゆっくり戻っていった。母と息子が寺院から外に出ると、夜が明けていた。

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写真:宇宙の母ラジャラジェスワリの女神像

※9 動物を追い立てるのに用いる象使いの道具

続く

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