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スワミジの伝記 2-10(『Swamiji The Manifestation』より)

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第2の周期(1954-1966) 若きスワミ 第10話

学校の年度末、サティアナーラーヤナは2年生にぎりぎり進級できる最低ラインの成績をとった。しかしながら、ヴァララクシュミーが置かれた状況に改善はなく、なんとか妹を訪問できた際は、妹の扱いについて兄に抗議したのだった。
ナンジュンダヤのもとで暮らすようになってからちょうど2年が経とうというとき、2つの出来事が状況をさらに悪化させた。サティアナーラーヤナは2年生の年度末試験に合格したため、ナンジュンダヤは弟に贈り物をしたいと考えた。ある日、ヴァララクシュミーを訪れて戻ってくると、サティアナーラーヤナは兄の書き置きを見つけた。「腕時計をもっていったかい?」と書いてあった。その内容に困惑したサティアナーラーヤナは、ナンジュンダヤへ会いにいった。メモ書きがなにを意味していたか兄から直接聞き、サティアナーラーヤナはショックを受けた。

「試験に受かったんだろう」とナンジュンダヤは言った。「私はおまえに時計を贈りたかったんだ。もう持っていってしまったなんて、少し気が早かったんじゃないか?」

兄がくれるはずだった時計を、自分が先に盗んだと兄に思われていることを、サティアナーラーヤナは知った。なにも弁解せず、少年は兄の家を去った。数日後、アンバンマが置き間違えた箱の中に、なくなった時計が入っているのをヴァララクシュミーが見つけ、ナンジュンダヤに見せたところ、兄は弟を咎めたことを深く反省した。

この事件のすぐあと、ヴァララクシュミーは右手をサソリに刺されてしまった。怖くなった少女は、刺された途端に叫び声を上げ、泣きわめいた。家事をやりたくないがために痛いふりをしているだけだと思ったアンバンマは、少女に罰を与えた。この出来事の真っ最中に、サティアナーラーヤナが家を訪れた。ヴァララクシュミーはむせび泣きながら兄に駆け寄り、なにが起こったかを話した。サティアナーラーヤナは激怒した。

「あなたたちはみんな、妹を召し使いか奴隷のように扱うんですね!」と大声を上げた。「もうこれ以上、ここにはいられません!」

ナンジュンダヤは弟をなだめようとし、父親の次の訪問まで待って、それまでは家を出ないよう説得した。その後、ナラシンハ・シャストリは家にやってきたものの、これらの出来事には関心を示さなかった。

「人間がケンカをするのは自然なことだ」と父は息子に言った。「放っておきなさい」

「でも、ここにはいられません!」とサティアナーラーヤナは言い返した。

「わかった、行きたいなら行きなさい」と父親は答えた。

父の言葉が耳に響く中、サティアナーラーヤナは家を飛び出して、そのまま鉄道の駅へ向かった。切符売り場にいた職員から、バンガロール行きの列車までまだ時間があると聞き、ベンチに座って、なにが起こったのか頭を整理した。「人生にどんな違いがあるんだろう?」と彼は自身に問いかけた。「おばの家に住んでいたときのプロデーターでの生活と、兄の家族と過ごしてこんな経験をしなければならない現状と! 施しを受け、他人の家で暮らさなければならなかったときは大変だった」と彼は物思いにふけった。「でも、霊的実践者との交流があり、愛にあふれる人々に出会えた。ここには、たっぷりの食べ物と、いい滞在場所がある。でも、敵意に満ちた環境だ!」

サティアナーラーヤナは列車が待ちきれなくなり、プラットフォームをうろうろ歩きだした。すると、近くに年配の男性が待っているのに気づいた。服装や物腰などすべてから、彼が裕福なのが見てとれた。驚いたことに、その紳士は突然、少年に目を向け、名前を呼びながらサティアナーラーヤナへ近くに来るよう身振りで合図した。びっくりした少年が男性のもとへ行くと、彼は母親のジャヤラクシュミーをよく知っていると教えてくれた。紳士はすぐさま、ヨガと自身のサーダナ(霊的実践)について話を始めた。サティアナーラーヤナは、彼がムンバイ出身の裕福なビジネスマンで、いくつかの会社を所有していることを知った。ジャヤラクシュミーの師であるカラパートラ・スワミが彼の家を訪れ、ヴィディヤ(最高知識)のイニシエーションを受けたそうだ。彼は少年に、イニシエーションを受けた瞬間、聖なる母とひとつになり、妻に対する肉体的衝動が一切なくなったと話してくれた。不幸にも、子どものころに親が決めた相手とすでに結婚していた。しかしながら、妻は彼の心の変化を尊重し、純粋な思いと行いでもって、彼に仕えた。さらに彼女は、夫の霊的実践も支えた。夫の両親が亡くなると、家族の責任は彼がすべて負うことになったが、それにもかかわらず、彼は内なる儀式の実践を今後も続けると語った。

数年後、男は自身の財産とビジネスを引き継ぐ息子を持たなかったことを後悔した。在命の親戚には悪しき習慣と中毒があり、自分の死後、安心して彼らに自分の財産を託せるとは思えなかった。そこで、息子をもうけるために、自身の霊力を妻に移す決意を固めた。最初はすべてがうまく言っているように見受けられたが、妻の弱い体では、流れ込んでくる彼の激しい力に耐えられず、翌日、彼女は命を落とした。このビジネスマンの男が妻の死から立ち直るのに、10年かかった。

「それにもかかわらず、私はまだ息子が欲しかったんです」と、裕福な男は少年に語った。「だから、養子にできる崇高な少年を授けてくださいと、聖なる母に祈りました」

「聖なる母はなんと言ったのですか?」とサティアナーラーヤナは訊ねた。

少年の手をとったビジネスマンは、その手を自分の目に当てた。

「ここに、愛すべき子どもを見せてくれたんです」と彼は囁いた。

サティアナーラーヤナはショックを受けたと同時に、元気づけられた。母が死んで以降、誰もこんな愛情を注いでくれなかったからだ。

「親愛なる少年よ、君はすでに逃げてきました。母親は君を置き去りにしました。父親は君のことを考えていません。妹のヴァララクシュミーとサラスヴァティーは君の助けを必要としています。私たちなら、ふたりの立派な結婚を一緒にアレンジできます。私と一緒に来ませんか?」と、裕福な男は訊ねた。
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この男性は母親と同じ霊的伝統をもち、高いレベルのヴィディヤ(最高知識)を習得している。穏やかそうだし、高潔で、愛情豊かだ。サティアナーラーヤナには躊躇する理由がなにも見当たらず、即座に同意した。数分後、少年はムンバイ行きの列車の一等車に座っていた。列車の中で、男性がついに眠りに落ちるまで、ふたりは引き続きヴィディヤについて語った。サティアナーラーヤナは窓側に座り、過ぎゆく田舎の風景を楽しんでいると、列車がグンタカルで停車した。そのとき突如、彼は母親のヴィジョンを目にした。彼女は怒った表情で彼を見ていた。

「サティアナーラーヤナ! 私はあなたにどんな道義を教えましたか? なにをやっているのですか?」と、母親のイメージは彼に訊ねた。「世界の幸福のために働くという誓いはどうなったんですか?」

駅を出発するため、列車が揺れだした。サティアナーラーヤナはドアへ急ぎ、動き出した列車から飛び降りた。少年はプラットフォームに顔から落ちてしまった。そこに横たわったまま、彼は母に感謝を捧げた。

「お母さん、私は救われました」と彼は祈った。「聖なる愛があるというのに、私は人の愛を求めて手を伸ばしていました。母さん、許してください。このような過ちは、2度と犯しません」

幸運にも、彼はアナンタプルへ戻るチケットを買えるだけのお金を持っていた。帰途につきながら、彼は思った。「人間は些細な存在であり、彼らの愛も同じだ。彼らの愛が些細ということは、彼らの憎しみも些細だ。ということは、ずるい人間が生み出した恥ずべきことも些細なはずだ。彼らの報いや賛美にも同じことが言えるだろう。よって、彼らの愛にも、拒絶されることにも、僕は影響されるべきではない。憎しみと愛は、硬貨のように表裏一体だ。どちらかに打ち負かされることは、両方に打ち負かされることを意味する。憎しみを克服しようと努力してきたけれど、愛も克服しなければならなかったとは、僕はまったくわかっていなかった」

アナンタプルへ到着したのは午後遅くで、 サティアナーラーヤナは疲れ、のどが渇いていた。家の水瓶が空だったため、水を汲もうと地元の給水栓があるところへ言った。村の人々が数人、洗い物をしていたが、水が不足していたため、彼らは少年を追い払った。

「明日の朝には、ここでみんなが幸せに水を飲んでいるのを見ることになりますよ」と、サティアナーラーヤナはその場を去りながら彼らに大声で言った。

2時間後、8人の友人たちと共にそこへ戻り、井戸を掘り始めた。何が起こっているのか不思議に思った近所の人々が、まわりに集まりだした。

「ここを掘っても、どうにもならないぞ」と彼らはサティアナーラーヤナに告げた。「少なくとも40フィート(約12.2メートル)は掘らねばならず、それには10日間近くかかるし、それでも水は出ないかもしれない!」

「なにがわかると言うんです?」と、掘りながらサティアナーラーヤナは答えた。「明日の朝また来てください、そして水瓶を持ってきてくださいね」

午後中、掘り続けて、夕方になり、ついに夜中になった。サティアナーラーヤナは歌や冗談で仲間を元気づけた。 夜明けに25フィートくらいの深さまで掘り進めたところ、堅い岩に当たった。8人の友人たちは完全に疲れ果て、やる気もなくしてしまい、もう諦めることにした。しかしサティアナーラーヤナは、彼らに待つように言った。彼はココナッツを手に取り、岩にぶつけて割った。それから、友人ふたりにバールで岩を打つよう頼んだ。彼らが岩を打とうとした瞬間、彼は「母さん!」と叫んだ。友人たちが驚いたことに、岩が半分に砕け、割れ目から水が流れ出したのだ。少年たちは大喜びし、歓声を上げだした。

「なんて不思議なんだ!」と彼らは大声を上げた。「この水はココナッツみたいな味がする! これほど短い間に、どうしてこんな井戸を掘れたんだろう?」

「なにも不思議じゃないよ」とサティアナーラーヤナは友人に告げた。「強い決意とたゆみない努力で、固く決心する、それはまさに霊的実践なんだ!」

続く

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