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シュリーマド・バーガヴァタム 第51話

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深い悲しみのために声をつまらせていたアルジュナは、質問に正しく答えることも、悲しみを素直に表現することもできませんでした。彼は続けました。

「私は、カウラヴァたちがヴィラータ王から盗んだ牛たちを取り返し、王に返しました。私は、カウラヴァ族の権力を象徴した宝石で装飾され王冠を力ずくで奪い取ることができました」

戦士が着用する王冠のデザイン、形、装飾は、その人の技量と地位の証です。力ずくで奪い取られることは、彼らにとって屈辱を意味します。

「シュリ・クリシュナの愛の恩寵がなかったなら、どうやって私はこの偉業を成し遂げられたでしょう。ビーシュマ、カルナ、シャリヤ、ドローナチャルヤなどの指導者が率いるカウラヴァ族の大勢の軍隊は無敗でした。その卓越した指導者たちは、独自の編隊で戦車を動かし、カウラヴァ軍の栄光をもらたしました。私が彼らを睨みつけるよりも先に、クリシュナは鋭い凝視で彼らを圧倒していました。主はその目力を持ってして戦士たちから力と熱意を完全に奪いました。

ビーシュマ、ドローナ、カルナ、スシャルマ、シャリヤ、アシュヴァッターマン、サインダーヴァ、バーフリカといったカウラヴァ軍の指揮官たちは、戦争中に強力で暴力的な武器で私を攻撃しました。ヒラニヤカシプの恐ろしい破壊的な武器が主ナラシンハの最高信者プラフラーダに害を与えなかったように、カウラヴァ族の残酷な武器も私を少しも傷つけませんでした。主の恩寵がなければ、こんなことがありえるでしょうか。これがクリシュナの恩寵でないと言えましょうか。

至高主は、帰依者たちを深く愛しておられます。卓越した人なら、解脱を達成する目的で、この主の聖なる御足を専心的に崇拝します。ああ、私はなんと愚かで無知だったのでしょうか。そうとも知らず偉大な至高主が戦争中に私の戦車の御者であることを望んでしまったのです。

戦争中自分の馬が疲弊すれば、私は戦車から降りて、馬のために水を運びました。敵はそのような時にも武器で私を攻撃することがなかったのです。主の力と偉大さがなければ、そのようなことが起こりえるでしょうか?

その時私が主のご威光を認識していなかったのは私の完全な落ち度でした。今、私はあらゆる意味で主の恩寵と威光がわかります。私の心の片隅では彼が至高者ではないかと思っていたのですが、私は主の本質を完全に理解することができていませんでした。

偉大なる王よ!シュリ・クリシュナは、深い愛情を持って顔に笑顔を浮かべて、おどけて私をからかいます。同時に、主は私に「クルナンダナ」、「クンティの息子よ」、「アルジュナよ」、「親愛なる友人よ」と言いながら素敵に話しかけてくださいました。愛情ある言葉すべてを思い出していると私の心は荒れてきます。

座ったり、立ったり、眠ったり、食べたり、その他何をしている時も、私はいつでも主と競争します。私の栄光と偉大さを自慢して、私は主を「友よ!」、「誠実な人よ!」と呼び、主をからかったものです。シュリ・クリシュナは、真の友人がその友人を許すのと同じように、または父が息子を許すのと同じように、愚かなことをしてしまった私の許しがたい罪を許してしまわれるほどその御心は大きかったのです。

私は今悟りました。罪人である私は、親愛なる友人と隔絶してしまっているのです。私の心は完全に空虚です。悪意のある平凡な臆病者の少年たちが、私の戦車を止めたので、私は主の妻たちを救おうとしましたが、いとも簡単に私は戦闘で打ち負かされました。彼らは女性に打ち勝つのと同じくらい容易に私を倒しました。同じ戦車、まったく同じ馬、同じガンディーバの弓と矢は彼らには何の効果もありませんでした。以前なら、このアルジュナを目の前すれば、偉大な皇帝でさえ畏敬の念を抱いていましたが、今ではその辺の普通の臆病者の男の子たちに敗れてしまったのです。

以前はクリシュナがすべてのものに活力を与えていました。今は主の不在により、これらのすべてに活力が枯渇しているのです。当時私は主の偉大さを実感できませんでしたが、今、主の不在により理解することができます。同じ馬、同じ弓、同じ矢、同じ戦車なのに今は輝きがないです。私、偉大なアルジュナは、もはや女性にさえも容易に私を打ち負かされる状態になっています。

幻覚を使って魔術師が工作した玩具のように、すべてがまぼろしのようです。私は何ができましょう?不毛の土地に播種された種子のように、知識のすべてがまったく役に立ちません。灰の上にギーを注ぐのに似ています。

偉大な皇帝よ!あなたはドゥワーラカの親戚たちについてお尋ねくださいました。 ヴェーダ学者のブラフミンに呪われたヤーダヴァ族は、知性と理性の力を失いました。過度の酒を飲んだせいで酩酊状態になり、彼らは仲間同士で喧嘩し、殺し合いました。いまや四、五人しか生き残っていません。

私はこういった出来事のすべてが最高主クリシュナのお戯れ以外の何物でもないと信じています。主の眼前で主の一族は滅亡しました。ですので、これは主の意図したところなのです。主はこの世に何一つ残さないことを保証するためになされたに違いないです。

時には人々はお互いを守り合い、時には彼らはお互いを滅ぼし合います。それが主の純粋な恩寵です。ヤーダヴァ族は仲間同士でとても親密で愛し合っていました。そのよう人々がお互いを殺し合ったなら、それは主の意志以外の何でしょうか。

皇帝よ!巨大な海の動物が小さな動物を飲み込むのと同じように、強い者が弱い者を食べるのと同じように、クリシュナは強いヤドゥ一に弱い者たちを殺させました。これによって主は大地の負担を軽くしたのです。

主がタマス(暗質)の特性に満ちていたカウラヴァ族をこの大地から拭い去ったように、今や主はヤドゥーたちが仲間同士で争うように仕向けになりました。

私の親愛なる兄よ!時間と空間に基づく問題に対応したクリシュナのお言葉によって私の心臓が高熱を発するのを冷やしてくれています。主の説法とはそれほどのものなのです。これらの言葉は今私の記憶に舞い戻り、今私の心を引っ張り戻しています」

このようにして純粋な心を持ち、偏りのない愛情を持つアルジュナが、シュリ・クリシュナの蓮華の御足について熟考していたとき、彼の純粋な心はすべての悲しみから免れました。 シュリ・クリシュナの蓮華の御足を熟考することにより、アルジュナの知性から欲望や他の様々な不純物が完全に破壊されました。アルジュナは自分の任務と贅沢な享楽にすっかり夢中になってから長い時間が経過しており、彼は至高主シュリ・クリシュナが戦争の初めに説教されたバガヴァッド・ギーターを完全に忘れていました。しかし、今やっと彼はすべてを思い出しました。これで彼の悲しみは洗い流されました。

アルジュナは最高知識(ブラフマ・ジュニャーナ)を獲得しました。霊的な無知(アジュニャーナ)が彼の中で完全に破壊されたので、彼はその肉体に対する愛着を失いました。彼は世俗的な束縛(サンサーラ)を取り除くことができました。彼はあらゆる差異と二重性を捨てることができました。彼はもはや悲しんでいません。彼は生まれ変わる運命から完全に解放されました。

シュリ・クリシュナ、すなわち最高の主がご自身の物質的な形を捨てて、ヤドゥ一族が壊滅させられたことを知り、ユディシュティラは自分の心を完全に鎮めて、彼も天国に昇る(スワルガローハナ)べきであること確信しました。

ダッタ ナーラーヤナ

続く

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