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医療として注目されるヨガと瞑想

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代替医療の人気が始まったのは1960年代後半

アーユルヴェーダ、カイロプラクティック、ホメオパシー、リフレクソロジー、オステオパシー、アロマセラピー。健康ブームの昨今、街は代替医療のサロンやスクールに溢れ、テレビ番組、インターネットなどでも大きく取り上げられています。

 日本では最近の動きのように感じられますが、代替医療が脚光を浴びるようになったのは意外にも古く、1960年代後半。アメリカを中心に既存文化や主流の体制に反発するカウンターカルチャーが台頭し、それまで正統とされてきた西洋医学に取って代わる、通常医療とは異なったアプローチを行う伝統医療や民間療法が注目を集めます。
 はじめは正統VS代替という形で対向していましたが、近代医学にはない効果が期待できるのではないかと、アメリカでは1991年、補完医療や代替医療を研究する政府機関が設立、2014年12月、アメリカ国立補完代替医療センター(National Center for Complementary and Alternative Medicine/NCCAM)からアメリカ国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health/NCCIH)に改称されました。アメリカだけでなく、イギリス、ドイツなどのヨーロッパ諸国でも積極的に研究・調査が行われています。

局所的な「対症療法」から人を全体として捉える「原因療法」へ

 そもそも、代替医療とはなにか。欧米では、近代医学(西洋医学)以外のすべての療法を総称して、補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine)とする傾向があり、頭文字をとってカムとも呼ばれています。日本では、鍼灸や漢方などの東洋医学を伝統医療、それ以外の比較的新しい医療体系を代替医療とする考え方もあります。
 西洋医学が患部や症状を診る局所的な「対症療法」とすると、補完代替医療は人の心身全体を診て自然治癒力や免疫力を高める「原因療法」。最近では、二つの療法を統合して両者の特性を上手に生かし、個人の体質や考え方を考慮してベストな治療法を見つける患者中心の統合医療(Integrative Medicine)が世界的に推進されています。

アメリカにおける補完代替医療の現状

 アメリカで補完代替医療や統合医療への関心が高まった理由のひとつに、健康保険制度の違いがあります。アメリカには日本のような国民皆保険制度はなく、民間の保険会社と契約しても治療費はかさむため、早くから予防医学が発達してきました。保健医療支出が上昇する中、補完代替医療の費用対効果の高さも評価されています。
 また、近年増加の一途をたどる、一人ひとり原因が異なる生活習慣病や精神的疾患の治療において、病気の原因を取り除くための薬剤や手術を施すことを得意としてきた西洋医学で解決するには、限界がありました。そこで、西洋医学の欠点を補える補完代替医療が急激に注目を集めるようになったのです。
 科学的検証が不十分、教育環境や資格認定の整備がなされておらず、医療に関する法的規制が適用されないなど、問題点も指摘されていますが、一般的に心身への負担や副作用が少ないことなども、人気を後押ししています。

代替医療として認知されるヨガと瞑想

 現在、実用化が本格的に始まっている補完代替医療の種類はさまざまあり、マッサージ、健康食品、サプリメントなどもこれに含まれますが、アメリカ国立補完統合衛生センターでは、アーユルヴェーダ、中国医学、ユナニ医学、漢方、ホメオパシーなどの伝統医学を「独自の理論体系を持つ医療システム(Whole Medical Systems)」として、瞑想、ヨガ、音楽療法、アロマセラピーなどは「心身への介入(Mind-Body Interventions)」として便宜上分類。また、これまでの「補完代替医療」という名称に代わり、代案、代替手段を意味する“alternative”のニュアンスを薄れさせた「補完的健康アプローチ(Complementary Health Approaches)」という表現がよく使われるようになっています。

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インドでヨガは伝統医学

では、WHOも効果を認め、世界最古の医学と言われているアーユルヴェーダと、インダス文明に起源をもつとされるヨガ発祥の国・インドでは、ふたつをどうとらえているのか。欧米では補完代替療法と定義されることが多くとも、インドではどちらも国家が認めた正式な医学として扱われているため、アーユルヴェーダ大学が設立され、多くの医科大学にヨガ学科が設置されています。
 インドのモディ首相は2014年11月、日本の厚労省にあたる保健家族福祉省内にあった伝統医学を統括するアユッシュ局(AYUSH)を、省に昇格。「内閣改造でヨガ省を創設」「ヨガ大臣を任命」といった報道がなされましたが、アユッシュとはアーユルヴェーダ(A)、ヨガ&ナチュロパシー(Y)、ユナニ(U)、シッダ(S)、ホメオパシー(H)の頭文字をとった名称です。
 ユナニはインドのイスラム文化圏で行われている、アーユルヴェーダ、中国医学と並ぶ世界三大医学のひとつであり、シッダは南インドの伝統医学です。また、ホメオパシーはドイツ発祥の自然療法ですが、ホメオパス(ホメオパシーを施術する医師)の数が30万人いるとも言われているほど、インド全土に普及し、アーユルヴェーダ以上に利用されている伝統医学です。
 ヨガはもともと、宗教的な修行法として生まれたという背景がありますが、インドでは1920年代から科学的根拠で裏付けされた治療方法として研究されてきており、ヨガ&ナチュロパシーという、自然療法と組み合わせる形で推進されています。

ヨガを犯罪者更生プログラムにも応用

 ヨガには多くの流派やスタイルがありますが、体の姿勢、呼吸法、瞑想、哲学などが含有され、健康法としてスポーツクラブなどでも取り入れられているヨガのポーズには、体の歪みを補正、腰痛などの痛みを緩和する効果があります。また、呼吸法によって血行や代謝が改善、瞑想を適切に行うと副交感神経が優位になり、心拍数や血圧を低下させ、リラクゼーション効果が得られてストレス解消につながるなど、さまざまな有益性が医科学的に証明されています。
 菜食主義者で毎朝ヨガを実践しているモディ首相は、インドの公務員300万人を対象とした無料のヨガクラスの提供を約束。犯罪者更生プログラムへの導入も開始され、マハトマ・ガンジーが2度収容されたことで有名な、マハーラーシュトラ州プネー県にあるイェラワダ・セントラル刑務所は、ヨガは自制心を高め、攻撃性を減退させるとして刑務所内でヨガクラスを実施。実技と筆記の試験に合格した囚人の刑期を3カ月短縮するといった試みを行っています。また、エア・インディアはヨガをパイロットの訓練の一環として導入することを検討しています。

国連が「国際ヨガの日」を制定

 インドの優れた伝統医療を国内で活性化させるだけでなく世界に広めようと、インド政府は現在、ヨガを世界遺産にするようユネスコに働きかけています。また、モディ首相の提言により、国連は2014年12月、6月21日の夏至の日を「国際ヨガの日」に認定。それを受けて、インドの首都ニューデリーの観光名所「インド門」前の大通りで2015年6月21日、政府主導の大規模なヨガイベントが開催され、瞑想をするモディ首相と3万7,000人もの参加者の映像が世界中に配信されました。
 同日、日本を含む世界約190カ国で無料のヨガイベントが行われた結果、これまで以上にヨガや瞑想に関心と期待が寄せられており、日本の厚生労働省も、医科学的根拠をもとに、代替療法としての瞑想やヨガの有用性を認めています。
 ヨガと聞くとアクロバティックな動きを想像したり、瞑想を神秘主義的なものと考えたりする傾向もありますが、無理をせず、人それぞれの心身の状態にあった方法で取り入れることが可能なため、一般層へのさらなる広がりが期待されているのです。

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ストレス社会の日本におけるヨガの役割

 日本は先進国の中で韓国に次ぎ自殺者の多い国であり、「OECDヘルスデータ2015」によれば、2012年の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は18.7人。毎日70人以上が自ら命を断ち、15~24歳の自殺率は90年代以降、上昇を続けています。内閣府が発表した「平成27年中における自殺の状況」を見てみると、20代の自殺原因の上位3位は、うつ病、統合失調症、仕事疲れ。すべて、ストレスが原因になっているのです。また、国連の「世界幸福度報告書」2016年版によると日本は53位と低く、前年の46位からさらに順位を落としています。心身のストレスを早めに解消し、健康で心豊かな暮らしを続けるために、ヨガや瞑想をはじめとした補完代替医療への関心は、今後さらに高まりそうです。

スワミジ招聘委員会

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