言葉と教え

シュリーマド・バーガヴァタム 第276話

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第5巻、第10章
この章では、ラフーガナ王がジャダバラタに輿に乗せるよう強要する様子、ジャダバラタと王の対話、そして悟りを開いた王がジャダバラタを喜ばせようとする様子などが描かれています。

マハルシ・シュカはパリクシットにこう言いました。「ラフーガナはシンドゥ県とサウヴィラ県の王でした。ある時、彼が輿に座り、イクスマティ川の岸辺を旅していたとき、担ぎ手たちは誰か手伝いが必要だと感じました。

担ぎ手の長は、偶然、その辺にいたブラフミンの中でも最高のジャダバラタを見かけました。長はこう思いました。「この男は、力強く頑丈な体と力強い手足を持っている。彼は雄牛かロバの姿をしている。どんな重量でも楽々と運ぶだろう。この仕事に適任だ。」

彼はすぐにジャダバラタに、王が座る輿を運ばせました。ジャダバラタにはそのような仕事の経験はありませんでしたが、他の担ぎ手と一緒に担ぎました。

ジャダバラタの心は、あらゆる生き物に対する慈悲の心で溢れていました。歩く時に蟻が踏みつぶされるのではないかと心配していました。道の虫や蟻が大丈夫か確かめるため、自分の足取りを注意深く見守っていました。そのため、彼の動きと他の担ぎ手の動きがちぐはぐになり、輿は不規則に揺れました。

輿に座っていたラフーガナ王はすぐに尋ねました。「なぜ揺れるのだ? 気を付けて、足取りを合わせてくれ。」

担ぎ手たちは、王の非難めいた尋問に驚きました。罰を恐れた彼らは、丁寧に答えました。「王様、私たちは命令を厳守して、輿をきちんと担いでおります。奴は最近この任務に採用されたばかりで、私たちの速さについてこれません。私たちも奴の足取りに合わせています。奴と一緒に輿を担ぐのは無理だとわかりました」

ラフーガナ王は本来、年長者に従順に仕える善良な人物でしたが、この時の彼の心は、戦士社会に特有の激情(ラジョ・グナ)に満ちていました。その結果、彼は激怒しました。輿を担ぐ者たちが丁重に発する言葉を聞いて、彼はこう考えました。「おお、集団の誰かが過ちを犯すと、通常は他の全員が罰せられるものだ」

新入りのジャダバラタは、炭の中に秘められた燃えさしのように輝いていましたが、王は彼に話しかけ、嘲笑するように言いました。

「おお兄弟よ、どうやらお前は大変な目に遭ったようだ。疲れているのは明らかだ。なにしろ長い間、一人でこの輿を担いできたのだしな。可哀そうなことだ。他の担ぎ手たちは、お前をちゃんと助けていないのか? 彼らにはお前のように強靭な手足はない。友よ、老齢のため衰弱して疲れているように思うが、どうなんだ?」

賢者ジャダバラタは、この叱責に対して沈黙を守ることを選びましだ。よく観察すれば、彼は生涯を通じてひどい扱いを受けていたことがわかります。兄からは嘲笑され、まともな食事も与えられず、衣服も与えらませんでした。以前、盗賊たちが彼を殺そうとしたが、その時は母なる女神が彼を守りました。それでも彼は、全く影響されることなく、以前と変わらぬ人生を送りました。

彼は王の叱責に応じませんでした。王に怒りを抱くこともありませんでした。彼の考えでは、この幻の体は、純質、激質、暗質という三つの属性の組み合わせによってのみ現れていました。それは五つの基本元素から成り、霊的な無知が存在に肉体を与えて、行動を起こさせていると彼は信じていました。

ジャダバラタにとって、これは最後の転生でした。彼は今や至高の神パラブラフマの化身となりました。彼の肉体には名前と姿だけが結びついていました。「私は私のもの」といった利己的な感情やその他の幻の感情は、完全に消えていました。そのため、彼は沈黙を守り続けて、それまでと同じように、幸せそうに輿を担ぎ続けました。

その間にも、険しい場所に差し掛かり、輿はさらに激しく揺れ始めました。王は動揺して、激しい怒りに駆られました。怒りを抑えきれず、王は言いました。

「おい、これは一体何だ? 生きているのに死が襲ってきたようだ。歩く屍のようだ。王の命令を守ろうともしない。私に背くとは。死の神ヤマが悪人を罰するように、今こそお前を罰しよう。傲慢でうぬぼれが強く、私に何度も背いている。罰することで、お前はもっと仕事に励むだろう。」

このように、自惚れ屋の王はジャダバラタに傲慢な態度で語りかけました。彼は口にすべきではない言葉を口にしました。激情と無知が彼の心を完全に覆い尽くしていました。その傲慢さゆえに、彼は主の熱心な信奉者であるジャダバラタを罵倒し始めました。王は自分を偉大な学者だと考えていましたが、学者についての正しい理解もありませんでした。そのため、偉大なヨーギーたちの行いについて全く無知でした。

ジャダバラタは至高の尊い聖者であり、偉大なブラフミンであり、至高主の化身でした。彼は常に、創造されたすべての生命体の幸福のために尽力しました。

ハレー・クリシュナ

第277話へ続く

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