シュリ―マド・バーガヴァタム 第2話
更新日 : 2017.3.23
カテゴリー : シュリーマド・バーガヴァタム
聖仙ナーラダは続けて言いました。「このカリ・ユガ(時代)では、ジュニャーナ(至高の知識)とヴァイラーギャ(離欲、無執着)は忘れられ、人々の間ではバクティ(信愛)さえも少なくなってしまいました。このような訳であなた方三人は老化してしまいました。あなたがブリンダーヴァンに到着したことはとても幸運なことです。この土地の徳のおかげで、おお、バクティよ、あなたは若さを取り戻すことができました。この場所ではバクティ(信愛)が支配しているからです。しかし至高の知識(ジュニャーナ)と離欲(ヴァイラーギャ)の達成については誰も気に留めません。その結果、あなた自身は若さを取り戻しましたが、彼ら二人は老いたままです。しかしこの聖なる土地の徳ゆえに、少なくとも今しばらくは、彼らは心地よく眠ることできるのです。」
これを聞いてバクティ女神は尋ねました。「おお、聖仙よ、かのパリクシット王(アルジュナの孫)が、この不純なカリ(ユガ)を崇拝したというのは、どういうことでしょうか?パリクシット王は一体なぜカリユガを定めたのでしょうか?カリユガが始まったときダルマ(正義)の本質に何が起こったのでしょうか?なぜ慈悲の化身である至高の主ハリは、この罪深いカリを忍耐されるのでしょうか?どうか私に説明して頂けないでしょうか。」
これに聖仙ナーラダは答えました。「おお、若い女性よ、私はあなたの困難だけでなくあなたの疑念も打ち消せるようにお話しましょう。カリユガが自身を地上に確立したのは、主クリシュナがこの地上を離れて彼の(天の)住処に帰ったまさにその瞬間でした。パリクシット王は世界征服の旅(ディグヴィジェイ・ヤトラ)の途中、カリ・プルシャ(霊:カリユガの主宰神)に出会いました。カリの霊は涙ながらに王に駆け寄り、その足下にひざまずいて避難所を求めました。当初パリクシットはこのカリを殺すつもりでしたが、この時になって、彼は次の台詞にあるように考え始めました。
Yat phalam nāsti tapasā na yōgena samādhi nām
Tat phalam labhate samyak kalou keśava keertanāt
(意味):最初の三つの時代(クリタ・ユガ、トレーター・ユガ、ドヴァーパラ・ユガ)に苦行(タパス)やヨーガやサマーディでも与えることができなかった成果が、カリ・ユガでは、ただハリの御名を唱えるだけで達成される。
パリクシットはまた次のように考えました。カリは現在、一つの場所に一つの形を取っている。しかしこのカリがもし多数に分割されないならば、カリの恩恵は達成されないだろう、と。これは本質(サラム)が寺院、河川、学校、聖地から失われてしまったためであり、このカリユガの主宰神が一つの形を取っていたため起こっていたことでした。しかしながら、これはカリ自身の過ちではありません。これはユガ・ダルマ(特定の時代に適用される正義の側面)でした。「この状況においてカリに過ちがあるだろうか?カリを殺す理由は見当たらない。私は彼をただ分割しよう。」パリクシットはそう考えました。彼は即座にカリを分割しました。」こうしてナーラダはカリの物語を終えました。
バクティはその話を聞いてナーラダ聖仙を称賛し、彼を讃える歌を歌いました。
主ナーラダは言いました。
Vrthā kherayase bāle aho chintāturā katham
Sri Krishna charanām bhojam smara duḥkham gamiśyati
(意味):おお、若い女性よ、なぜあなたは不必要に嘆くのですか?主クリシュナの蓮華の御足を想いなさい。あなたの悲しみは晴れるでしょう。
「彼(主クリシュナ)はカウラヴァからドラウパディーを守りました。彼はゴーピカ(牧女)たちを守りました。おお、バクティよ、あなたは主ヴィシュヌにとってとても愛しい方です。もしあなたが彼に呼びかければ彼は必ずやって来るでしょう。クリタ・ユガ、トレーター・ユガ、ドヴァーヴパラ・ユガの時代には、ジュニャーナ(至高の知識)とヴァイラーギャ(離欲・無執着)が解放をもたらす道具でした。「Kalou tu kevalā bhaktir brahma sāyujya kārini」―カリ・ユガにおいては、ただバクティのみが解放(ブラフマー・サユジャ)を与えることができる、という意味です。」
「このような意図を持って、至高の主はあなたを創造しました。彼はまたあなたに信奉者たちを養育する責任も委ねました。そしてあなたもまたそれに同意しました。彼は解放(ムクティ)をあなたの侍女としました。そしてあなたの息子としてジュニャーナとヴァイラーギャが与えられました。あなたの本当の姿はヴァイクンタ(ヴィシュヌの世界)に存在します。いま目の前に存在するものは、ただあなたの影に過ぎません。ドヴァーパラ・ユガ(第三の時代)まで、あなたたちはいつでも幸せでした。しかしカリ・ユガでは、解放(ムクティ)は弱まり減衰してしまいました。そしてヴァイクンタへ帰ってしまいました。今、もしあなたが意図するなら、ムクタ(解放)は天から降りてくるでしょう。
今まであなたは、英知と無執着という二人の息子たちを守ってきました。しかしカリ・ユガの人々は彼らを敬いません。この理由のため、彼らは老いてしまいました。
それでもあなたは落胆してはいけません。状態においてカリと等しい他の時代はないことを覚えておきなさい!
このカリ・ユガに、私はあなた(バクティ:信愛)をすべての家庭に確立するつもりです。今日以降、これが私に定められた目的(サンカルパ)です。バクティという手段を通して、このカリ・ユガの人々は、彼らの罪を洗い落とすことでしょう。悪鬼や悪霊などでさえ、バクティによって、主ハリを想うでしょう。シュリハリは適切な信愛や信を通してとても容易に獲得することができます。信愛を通して主を獲得するより易しい方法は他にはありません。そしてただあなた、バクティのみが献身を授けることができるのです。」
このようにして聖仙ナーラダは女神バクティに自信を植え付けました。この偉大な聖者の言葉を聞いて、バクティはすべての悲しみから解放されました。しかし年老いた息子たちは依然そのままでした。彼女はこの悲しみもまた洗い流されるよう祈りました。
そこで聖仙ナーラダは息子たちの耳を持って起こそうとしました。すると彼ら二人は、ゆっくりと目を開け、座り込み、弱々しく聖仙ナーラダを見ました。しかしすぐにまた眠りに戻ってしまいました。これを見たナーラダ聖仙は繰り返し彼らを起こそうとしましたが、彼らは少しも動かず、努力は無駄に終わりました。ナーラダが心配になりはじめたその時、空から天の声(アーカーシャ・ヴァニ)が聞こえてきました。「おお、聖仙よ、嘆くことはありません。あなたの努力は成功するでしょう。あなたは、この世界に信愛(バクティ)を広めるというあなたの仕事を完成するでしょう。これによってバクティが極めて幸せになるだけでなく、彼女の息子たち、ジュニャーナ(英知)とヴァイラーギャ(無執着)もまた彼らの老齢を取り除くでしょう。彼らはもう一度完全な輝きを放つでしょう。」
空からのこの声を聞いて、ナーラダ聖仙は次のように考えたのでした。