シュリーマド・バーガヴァタム 第346話
更新日 : 2025.7.3
カテゴリー : シュリーマド・バーガヴァタム
インドラ神は、敵のせいで強力な雷電が手から滑り落ちたことを恥ずかしく思いました。インドラが落胆しているのを見て、ヴルッタはインドラを励まして、こう言いました。
「インドラよ、武器を取り、この敵を殺せ。今は悲しむべき時でも、侮辱されたと感じるべき時でもない。この創造の背後にある原因であり、宇宙の創造、維持、破壊の責任を負い、全知であり、時を超えて存在する至高主だけが、永遠の勝利を収める。一方で、肉体という同一性によって束縛された個々の魂は、時に勝利し、時に敗北に直面する。生命体が永遠に勝利すべきという法則はどこにあるのだろうか?勝利はどちらの側にも与えらるのだ。守護神を含むすべての生命体は、依存的な存在である。猟師の網に捕らわれた鳥のように、彼らは時間という網に捕らわれ、様々な果報的な活動に従事している。彼らの勝利と失敗は、時間だけが原因であることを忘れてはならない。」
Ojaḥ saho balaṁ prāṇam amṛtaṁ mṛtyum eva ca
Tam ajñāya jano hetum ātmānaṁ manyate jaḍam
時間こそが、生命体の真の力だ。感覚の力、肉体の力、そして生命力は、生と死という形で存在する。この重要な真理を理解できない愚かな人間は、この肉体が成功と失敗の根源であると誤って信じている。
女の姿をした木の操り人形が、操り人形師の手の中では単なる道具に過ぎないように、すべての生命体は至高主の手の中では操り人形である。
至高主はすべての創造の原因である。彼の幻想的な力(マーヤー)は、マハト・タットヴァ(宇宙的知性)、エゴイズム(アハンカーラ)、五大元素、感覚、そして生命体の四つの心として現れる。その恩寵は、幻影の帰結である創造、維持、そして破壊を引き起こす。
この深遠なる真理を悟らない愚かな者は、自らが行為者であり、結果の享受者である独立した存在であると誤解している。これは幻想である!真実は、至高主が生命体を通して創造を行うということである。そして、生命体を通してのみ、主は破壊を引き起こす。
Āyuḥ śrīḥ kīrtir aiśvaryam āśiṣaḥ puruṣasya yāḥ
Bhavanty eva hi tat-kāle yathānicchor viparyayāḥ
人は運命に基づき、長寿、富、名声を享受する。時には、たとえ望まないとしても、不名誉を経験する。それは、時が時宜を得た時に降り注ぐ報いだからである。それゆえ、成功と失敗、名声と不名誉、生と死、喜びと悲しみといったあらゆる二元性において、平衡を保つべきなのだ。
善、行為、無知といった特性は、幻想の力によって生み出されたものであり、純粋意識には属さない。したがって、人生で経験する二元性の単なる目撃者に過ぎないことを自覚する人は、それらの影響を受けないであろう。
インドラよ、お前は私の武器を破壊しただけでなく、さらに残忍に腕を切り落として私を打ち負かした。私はひるむことなく、この戦いでお前を殺そうと全力を尽くす。戦争は命を賭けた賭けである。我々の乗り物はゲーム盤であり、矢はサイコロである。このゲームでは、どちらが勝利するかは未知だ。
ヴルッタの明快で正直な言葉を聞いて、インドラの自尊心は鎮められました。インドラは雷電を拾い上げ、笑いながらヴルッタを讃えました。
「おお!悪魔の王よ!あなたは真に賢明で、熟達し、真我を悟った方だ。あなたは万物の幸福を願う方だ。至高主に完全に全託し、仕えてきた。束縛された魂を惑わす主の幻想を打ち破り、あらゆる悪魔的な性質を滅ぼし、至高の徳を培った。激情(ラジャス)に満ちたあなたの心は、徳(サットヴァ)の化身であるヴァースデーヴァ神にしっかりと立脚している。これは何と驚くべきことだろう!
主シュリハリは解放の主である。主を深く愛し、甘露の海を泳ぐあなたには、小さな溝のような天界の安楽は必要ない。」
ダルマを理解したいという願いから、彼らは議論を続け、その後、再び戦いを始めました。彼らは戦いを続け、時折、霊的な事柄について語り合いました。それは奇妙な戦いでした。
ヴルッタは突然、左手で恐ろしく重い鉄の棍棒を手に取り、勢いよく振り回しながらインドラに投げつけました。インドラは雷電で、鉄の棍棒とヴルッタの手を同時に砕きました。
両腕を切り落とされたヴルッタは、両翼を切り落とされた驚異の山のように輝いていました。この驚異的な武勇を誇る巨大な悪魔は、下顎を地に、上顎を天に突き出していました。天のように深い口と、恐ろしい蛇のような舌を持つヴルッタは、恐ろしい姿をしていました。その歯は死の歯のようで、まるで三界すべてを飲み込もうとしているかのようでした。
ヴルッタは歩くたびにすべての山々を揺さぶり、山の王のように両足で大地を踏みつけ、完全に押し潰しました。彼はインドラに近づいて、まるで蛇が象を飲み込むように、インドラの象であるアイラーヴァタをも軽々と飲み込みました。
彼はそれだけにとどまらず、インドラをも飲み込みました。これを見たマハルシ、神々、そしてプラジャーパティたちは嘆きました。「おお!なんと災難が我々に降りかかったことか。」
シュリハリが鎧(カヴァチャ)で守ったため、インドラはヴルッタに飲み込まれても死にませんでした。神の幻影の力さえもインドラを守ったのです。悪魔バーラを滅ぼした強大なインドラは、ためらうことなく雷電を放って、ヴルッタの腹を引き裂いて姿を現しました。そして、雷電を手に取り、山のように巨大なヴルッタの首を切り落としました。
想像を絶する速さで雷電はヴルッタに向かって突進し、その巨大な首を周回して切り裂き始めました。雷電がヴルッタの首を切り落とすまでに、太陽はすべての星々と共に南北の旅を終えました。つまり、雷電がヴルッタの首をその巨大な体から切り離すのに一年かかったのです。
アッチュターヤ・ナマハ
第347話へ続く