ラリタ・サハスラナーマの名の意味201~210
更新日 : 2022.10.3
カテゴリー : ラリタ・サハスラナーマ
201. Sadgati-pradā サドガティ・プラダー
意味)
1)彼女は信奉者に解放(サドガティ)で祝福します。
彼女は信奉者に正しい道を行かせ、解放で祝福します。
2)彼女は信奉者が想像を絶するレベル(ドゥルガティ)に堕ちて沈んでしまうのを防ぎます。それは信奉者に良い生まれ(ジャンマ)や、そこから霊的旅路を上昇することができる良い地位を祝福することも意味します。そのような保護が真のサドガティです。
202. Sarveśvarī サルヴェーシュヴァリ
意味)彼女は創造における全ての存在を支配する至高の皇妃(イーシュワリ)です。
『イーシャヴァスヤ・ウパニシャッド』の最初の詩句は次のように述べています。
Iśavāsyam idam sarvaṃ yat kim ca jagatyam jagat,
tena tyaktēna bhunjithā, ma grudhah kasyasvid dhanam
イーシャヴァースヤム イダム サルヴァン ヤト キム チャ ジャガトヤム ジャガト
テーナ トヤクテーナ ブンジター マ グルダハ カスヤスヴィド ダナム
意味)この宇宙に広がっているのは主イーシャです。彼は唯一で独立した存在です。彼はこの宇宙内の全てに広がっています。この世界で私たちが用いる全てのものは至高の主イーシャに属しています。あなたの地位における全ての富を信託物として使い、時が来たらそれを他者に引き渡しなさい。
『トリシャティ』には同じ真髄を表している「サルヴェーシ」という名があります。
203. Sarva-mayī サルヴァ・マイー
意味)彼女は全てに遍在しています。
これは以前の名の繰り返しです。創造における全てものと全ての存在に彼女のエネルギーと真髄が満ちていると強調しています。宇宙は彼女の姿が広がったものです。彼女は全ての存在のハートにいます。
204. Sarva-mantra-svarūpiṇī サルヴァ・マントラ・スヴァルーピニー
意味)彼女は存在におけるマントラの表れです。全てのマントラが彼女に集約されます。
「ムーラ・マントラーミカ・ムーラ・クータトラヤ・カレーバラ」と同じ意味です。
マントラは様々なアルファベッド(アクシャラ)からなります。そのようなアルファベッドは音(ナーダ)から生じています。彼女はマントラにおけるアルファベッド(アクシャラ)と音(ナーダ)の両方です。「マントラ」はヴェーダの諸マントラとオームカーラ(オーム)を含みます。
マントラは数にして七千万あります。「マントラ」の語は本質的に「思い(アローチャナ)」を意味します。「マントリー(大臣)」の語はここから来ていて、思考する者、深く考え行為する者を表します。マントラの詠唱(ジャパ)とは、絶対者について繰り返し考え、熟考することです。心は主への思いと感覚で満たされます。マントラは純化するものです。それは私たちの中に良い思い(サダーローチャナ)を生む原因となります。
マントラの繰り返しは私たちの体と心に多大な効果があります。様々な種類のマントラはエネルギーです。マントラはサンスクリット語の音節を持ちます。サンスクリット語は神の言語だからです。全創造が巨大な音から生じました(ビッグバン理論に類似しています)。その音がオームカーラです!
『マヘーシュワラ・スートラム』は述べています。
Nrttavasāne Naṭarāja-rājo nanāda dhakkam navapancavāram
Uddhartukāmah sanakādisiddhā netadvimarśe śivasūtrajālam
ヌルッタヴァサーネー ナタラージャー・ラージョー ナナーダ ダッカム ナヴァパンチャヴァーラム
ウッダルトゥカーマハ サナカーディシッダー ネータドヴィマルシェー シヴァスートラジャーラム
意味)シヴァは卓越したマハリシたちの集会の中でダッカ(太鼓)を45回鳴らしました。そこに座っていたマハリシたちの耳にそれぞれの能力に応じて違ったシャーストラ(聖典)あるいはストートラ(詩句・呪文)が響きました。彼らは受け取ったシャーストラ(聖典)を聖なる命令として受け入れ、そのシャーストラを発展させました。彼らが最初に聞いた音はオームカーラ(プラナヴァ・マントラ、オーム)でした。
ブラフマ―はアーディ・カヴィ(第一の詩人)です。この素晴らしい宇宙を創造したことによって、彼は「アーディ・カヴィ」の称号を与えられました。初期にはブラフマーは創造とその手法について手がかりがありませんでした。ヴィシュヌが助けに来て最初にオームカーラを教え、その後にヴェーダが続きました。こうして新たに明晰な認識を得たブラフマーは創造の仕事を始めました。無数のマントラがこのオームカーラから生じました。
以前に日本の科学者たちが水とマントラの関係を調査しました。数人に水の入った器が配られました。それぞれの人が異なった音節をそれぞれの器の水の前で詠唱しました。この調査は数日に渡って行われました。離れた所に座って科学者たちが進行を観察していました。四日後、水の分子が変化し、召喚した神のイメージが器に現れました。それらのイメージはカメラで撮影されました(これらの詳細はネット上で見ることができます)。
205. Sarva-yantrātmikā サルヴァ・ヤントラートミカー
意味)彼女は創造における全てのヤントラ(秘教的象徴形)のアートマ(魂)です。
彼女は全てのヤントラの形の中に現れています。
ヤントラには様々な不滅の種字語(アムルタ・マントラ)が描かれます。例えば八方角の種字語(ビージャクシャラ)はそれぞれの適切な場所に描かれます。また神に関連する主要なマントラ(ムーラ・マントラ)と、それに関連するガヤトリー・マントラが描かれます。中心にはオームカーラがあります。さらに「a」から「ha」までのアルファベット(アクシャラ)がその周囲に書かれます。そのして音の姿(マントラ、アクシャラ)としての聖なる絶対者を私たちが可視化する助けになります。
ヤントラは目に見えない力・エネルギーを可視化する媒介として描かれます。
ヤントラにはもう一つの特徴があります。それは金属プレートに描かれます。中心はビンドゥ(点)です。それを上に引き延ばすと、シュリ・チャクラになります。シュリ・チャクラを戻すと、それは平面の金属プレートになります。創造はこの偉大な哲学に類似したものです。無から拡張が起こり、全てが融合して無に戻ります。
ヤントラは礼拝のための強力な場所を作ります。神の像を奉献する際に、吉祥の時刻に聖なるヴェーダの詠唱の中で正式に礼拝されるのはヤントラです。寺院に勧請される神がこのヤントラの中に招かれます。そして神の像が導入されます。
マントラは音の形です。ヤントラは秘教的幾何学とアルファベットの形です。礼拝は音から形へと進みました。
206. Sarva-tantra-rūpā サルヴァ・タントラ・ルーパー
(サルヴァ・タントラ・ルーパーは一つの名です。そのため詠唱の仕方は、サルヴァ・ヤントラートミカー(休止)サルヴァ・タントラ・ルーパ―・マノーマニー、となります)
意味)彼女は全てのタントラーとアーガマー(礼拝の手順などを扱った経典)が合わさった存在です。
一般的に人は「タントラ」が黒魔術や人や動物の生贄(バリ)だと誤認しています。「バリ」は本当はプージャを意味しています。
「タントラ」は「広大なもの、広がっていくもの」を意味します。小さなヤントラやマントラがタントラへと広がっていきます。絶対者への入念で詳細な礼拝がタントラ的な手順です。タントラは知識(ヴィディヤ)も意味します。
至高の存在への祈りの一つは以下のものです。
ākāśāth patitam toyam yathā gachchhati sāgaram
sarvadeva namaskārah keśavam prati gachchhati
アーカシャータ パティタム トーヤム ヤター ガッチャティ サーガラム
サルヴァデーヴァ ナマスカーラハ ケーシャヴァム プラティ ガッチャティ
意味)空から落ちてくる水がやがて大洋に行きつくように、全ての神々に捧げた礼拝(ナマスカーラ)は唯一至高の絶対者へと行きつく。
全ての礼拝で使用されるマントラ、ヤントラそしてタントラは、ただ彼女だけに行きつきます。
207. Manonmanī マノーンマニー
意味)心が完全に統御された状態の時に彼女はいます。
これはヨーガと深く関係した重要な名です。
マノーナマニーは、マナ+ウンマニの二語からなります。ウンマニは「渡った」状態を意味します。つまりマノーナマニは志向者が「心の限定を越えた」状態です。これは感覚器官(インドリヤ)が完全に静まり、心が思考のない状態になった時、ディヤーナ(瞑想)に完全に没頭している時です。
ヨーガは純粋に「チッタ・ヴリッティ・ニローダハ(精神的な変化の止揚)」に到達するために行われるべきです。一瞬一瞬走り回っている心が段々と思考の波を減らしていくように訓練されます。シュリ・シャンカラ・バガヴァッド・パーダーチャリヤの入念な聖典である『ヨーガ・トラーヴァリ』はこの「マノーンマニー」の状態について詳述したものです。
208. Māheśvarī マーヘーシュヴァリー
(これはマーへ―シュヴァリと詠唱します。マヘーシュヴァリの名は後から出てきます)
意味)主マーヘーシュヴァラのエネルギー(シャクティ)として、彼女はマーへ―シュヴァリです。
「イーシュヴァラ」の語は、皇帝あるいは主です。主マーへ―シュヴァラは何十億もの宇宙からなる全創造の中でもっとも偉大で至高の皇帝です。彼はその中にある元素と全存在の支配者です。彼のエネルギーとして彼女は、この創造された何十億もの宇宙の至高の支配者であり、母です。そのため彼女は普遍的な母マーへ―シュヴァリです。
209. Mahādevī マハーデーヴィー
意味)主マハーデーヴァのエネルギーとして、彼女はマハーデーヴィです。
「デーヴァ」の語は「遊戯をしている者」を意味する「ディヴ・クリーダーヤーム」から来ています。私たちが送っているこの生活は彼の遊戯です。私の心は彼の遊び場です。彼は心の内にいる目撃者です。彼がゲームをやめようと決めると肉体は屍になります。この全創造の何百万という存在の中で遊んでいるので彼はマハーデーヴァです。彼のシャクティ(エネルギー)として、彼女はマハーデーヴィです。
「シヴァ・ガヤトリー」は次のようになっています。
Om tat puruśāya vidmahe mahādevāya dhimahī tanno rudrah prachodayāt
オーム タト プルシャーヤ ヴィドゥマヘー マハーデーヴァーヤ ディーマヒー タンノー ルドラハ プラチョーダヤートゥ
意味)至高の存在であるマハーデーヴァを瞑想します。そのようなルドラが私の心を照らしますように。
210. Mahālakṣmī マハーラクシュミー
意味)繁栄と維持の女神として、彼女はマハーラクシュミーです。
ヴェーダは述べています。
Lakshmi lakshyate sarvahā ani neti lakshmī
ラクシュミー ラクシュヤテー サルヴァハー アニ ネーティ ラクシュミー
「ラクシュヤテー」は、ゴール・目的・手段です。彼女は全ての存在にとってのゴールです。彼女を通して私たちはゴールに達します。そのため彼女はラクシュミーです。
女神ラクシュミーは全ての行為と思いの目撃者です。彼女は維持するためのエネルギーであり、そのエネルギーを通して存在は見ること、聞くこと、話すこと、考えること、受け取ることなどができます。
ラクシュミーはサムパダ(富・財産)も意味します。維持のために財産は不可欠です。そのため彼女は財産の女神として知られています。維持の神として彼女は日々八つの姿(アシュタ・ラクシュミー)として礼拝され、それは生活に必須のものを授けます。例えばダーンヤ・ラクシュミーは穀物、ヴィディヤ・ラクシュミーは知識、ダイルヤ・ラクシュミーは勇気を降り注ぎ祝福します。これらの姿は全て彼女から生じています。
「シュリー・スークタム」は彼女を次のように称賛しています。
Siddha lakshmi moksha lakshmir jayalakshmi saraswati,
Sri lakshmir vara lakshmi cha prasanna bhava sarvada.
シッダラクシュミー モクシャラクシュミール ジャヤラクシュミー サラスワティ
シュリー ラクシュミール ヴァララクシュミー チャ プラサンナ バヴァ サルヴァダ
これらはシッディ(成就)、ジャヤ(勝利)、モークシャ(解放)を授ける彼女の姿です。サラスワティとしての彼女は学習(ヴィディヤ)の女神であることを繰り返しています。彼女はシュリーラクシュミーであり、ヴァラ・ラクシュミー(恩恵の授与者)です。
特にシュラヴァナ月の間に詩句を詠唱しプージャを捧げ彼女を硬貨で礼拝することは非常に吉祥です。硬貨を彼女に捧げることは私たちを維持するもの、すなわちお金を捧げることを象徴しています。
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※シュリ・スワミジによる『ラリタ・サハスラナーマ』の詠唱アプリはこちらです。
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