シュリーマド・バーガヴァタム 第220話
更新日 : 2024.3.16
カテゴリー : シュリーマド・バーガヴァタム
母なる大地は続けました、「おお王よ、どうか、地面を平らにしてください、今は高低だらけなのです。このため、雨季の後でさえも、私のところには水がたまり続けて、湿ったままです。御身に吉祥なる祝福がありますように。」
このように、母なる大地は、美しい声で嬉々として言いました。プリトゥ王は、大地の忠告を尊重しました。王はスワヤンブヴァ・マヌを子牛に変えました。そして、搾乳容器として御手を使って、大地からあらゆる薬草と食用穀物を取り出しました。
賢者は、ここという場面ではどんな時でもその本質を学び取ります。プリトゥ王が母なる大地から搾乳すると、多くの人たちが彼に倣って、自由に大地から乳を搾るようになりました。つまり、望むものを何でも大地から手に入れるようになったのです。
さらに大地は、食用穀物の他にも、鉱物、宝石等の貴重な石を与えたり、また、地上の生命を支えたりしました。大地は、牛の姿であり続けていると言われます。大地は正義の顕現であり、正義を守っています。このようにして、大地は生命体を守護しています。
マハルシたちは、ブリハスパティを子牛の姿に変えました。彼らは、心、言葉、聞く力を搾乳容器として用いて、ヴェーダという乳を搾りました。
神々は、インドラ神を子牛の姿に変えました。そして、感覚、心、肉体に命を吹き込む甘露を絞って、金色の壺に入れました。
悪魔族は、偉大なる至高の悪魔のプラフラーダを子牛として使いました。彼らは鉄製容器を用いて、恍惚状態になる物質を絞り出しました。
ガンダルヴァとアプサラスは、至高のガンダルヴァであるヴィシュワーヴァスを子牛にして、大地から搾乳しました。彼らは蓮の花を容器にして、すばらしい旋律の音楽的な叡智と美を搾りました。こうして、彼らは大変な名声を獲得しました。
祖先の霊(ピトル・デーヴァタ)は、アルヤマを子牛にして、カヴヤと呼ばれる乳を搾りました。
完成の域に到達したシッダたちは、カピラを子牛にして、虚空という搾乳容器を用いて、アニマ等の超越的な力を搾乳しました。
ヴィディヤダーラ等の天上界の存在は、肉体を見えなくする術といった神秘力を絞り出しました。
妖術の使い手であるキンプルシャーは、悪魔のマーヤスラを子牛として使いました。彼らは、大地から錯覚的な魔術力を絞り出しました。彼らはこうした力を供えているので、ある場所から姿を消したり、どんな姿にもなったりすることができるのです。
ヤクシャ、悪魔、魔女、肉食の幽霊は、自分たちの長であるルドラを子牛として使いました。彼らは、頭蓋骨に血を集めました。この血を見ると、彼らは恍惚状態になります。
フードのない蛇とある蛇、様々な種類の毒蛇、サソリ、針のある昆虫は、タクシャカを子牛に使いました。彼らは自分たちの口を搾乳容器にして、毒という乳を絞り出しました。
動物たちは、雄牛のナンディを子牛に使いました。そして、森を搾乳容器にして、自分たちの食料となる草や葉っぱという乳を取り出しました。虎などの肉食動物は、ライオンを子牛として使いました。自分たちの肉体を搾乳容器にして、生肉という乳を搾りました。鳥たちは、ガルダ(鷲)を子牛として使いました。彼らは自分たちの肉体を搾乳容器にして、昆虫や果物という乳を搾りました。
木は、バニヤン樹を子牛に使いました。そして、様々な樹液を乳として絞り出しました。山々は、ヒマラヤを子牛に使いました。山の頂を搾乳容器にして、金やその他の様々な鉱物を取り出しました。
同様に、あらゆる種類の生命体が、その種類の長を子牛に使いました。そして、それぞれの搾乳容器に自分たちの食物を絞り出しました。こうして、プリトゥ王に征服された大地は、その乳からあらゆる生命体の望みを叶えました。虫であろうと、野生動物であろうと、バクテリアであろうと、神が創造したあらゆる生命体は、自分たちにふさわしい種類の食物を大地から手に入れたのです。
プリトゥ王は、この様子を見て大変に喜びました。そして、全ての生命体の望みを叶えた母なる大地を自分の娘として受け入れました。大地に父親としての愛情を降り注いだのです。
その後、王の中の王である、無敵の勇敢なるプリトゥ王は、鋭い弓の先端で高い山々を切り崩しました。そして、ごつごつした大地のとんがりを全て平らにして、ほとんどの地面をなだらかにしました。
Athāsmin bhagavān vainyaḥ prajānāṁ vṛttidaḥ pitā
Nivāsān kalpayāṁ cakre tatra tatra yathārhataḥ
ヴィーナの息子として生まれた、尊敬すべきプリトゥ王は、あらゆる人々に生きる糧を与えました。王は民を父親のように守りました。そして、(人々が暮らしている)土地の気候に応じて、彼らの家を建てました。
Grāmān puraḥ pattanāni durgāṇi vividhāni ca
Ghoṣān vrajān sa-śibirān ākarān kheṭa-kharvaṭān
プリトゥ王は、いたるところに村、町、都市といった集落を作りました。そして、様々な種類の城塞、鉱山地域、牧草地のための地取り、牛飼いの住居、家畜小屋、馬小屋、農村集落、山間の集落を作りました。また、軍隊の兵士が暮らすための居住区域も作りました。
プリトゥ王の統治が始まるまでは、村、町、その以外の集落という概念はありませんでした。こうした居住地域を定めて都市計画を立てた最初の王が、プリトゥ王でした。彼の治世の以前は、人々は自分たちの好きな場所に暮らしていました。王が集落の概要を練って、都市計画を行ってからは、人々は集落に移り住んで、恐れることなく、快適に暮らすことができるようになりました。
第十八章はこれで終わりです。
第四巻、第十九章です。
この章では、次の出来事が描かれています。プリトゥ王の百回目のアシュワメーダ・ヤグニャ、インドラ神が何回も生贄の馬を盗むこと、その度にプリトゥ王の息子が盗まれた馬を取り戻すこと、神官たちが生贄を捧げる火の中にインドラ神を投じようとすること、そこにブラフマー神がやってきて、インドラ神とプリトゥ王をとりなします。
マイトレーヤ・マハルシは続けました、「おおヴィドゥラよ、プリトゥ王は、百回目のアシュワメーダ・ヤグニャをブラムハヴァルタ地方で執り行うことにしました。かつて、スワヤンブヴァ・マヌも、まさにこの場所でヤグニャを行ったことがありました。この土地では、サラスワティ川が東に向かって流れています。
インドラ神は、プリトゥ王が百回目のアシュワメーダ・ヤグニャを執り行うことによって、自分よりも優位な立場に立とうとしていることに嫉妬しました。プリトゥ王が執り行うヤグニャの威厳に我慢ならなかったのです。」
ジャナールダナヤ・ナマハ