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シュリーマド・バーガヴァタム 第50話

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第十五章では、アルジュナによるヤドゥ一族の滅亡の説明、クリシュナのヴァイクンタ帰還、パーンダヴァたちのヒマラヤ山脈に向かう決断についてお話します。

主クリシュナの親愛なる友人アルジュナは、主から引き離されたことに苦しんでいたのですが、そこに集まった人たちは彼の顔色が悪く、目に輝きがないのを見て、何か悪いことが起こったのだと感じました。アルジュナは非常に落胆して悲しみに打ちひしがれていたので、何か話そうとしても言葉が出てきません。

そこで彼の兄ユディシュティラは、何か質問をすれば彼が話すきっかけになるだろうと期待して色々と質問しました。しかし、それでもアルジュナの心は悲しみで閉ざされており、何を聞かれても、その口から一言も漏れ出ることはありませんでした。ユディシュティラは、弟が質問を聞いているのかどうかさえわかりませんでした。

アルジュナの蓮のように艶やかな顔は完全に乾ききっており、潤いがありませんでした。彼は自分の目からとめどなく流れていた悲しみの涙をこらえて、拭い取りました。姿の見えなくなったクリシュナに対する深い愛情のせいで、彼の心は激しくかき乱されました。

アルジュナは、主と親密に過ごした美しい時間、主が彼の二輪戦闘馬車の御者になることを仰せになった出来事、そして、主との強い絆を思い出しながら、嗚咽しながら、感情を堪えきれないかすれた声でゆっくりと話しはじめました。

「王よ… 私の親愛なる兄よ… 私の最も近しき親戚であり、友であり、神であるシュリ・クリシュナは、私から逃れ、行ってしまったのです。そして去っていく際に、天人でさえ圧倒した私の輝きをすっかり取り払ってしまわれたのです。

生命の力(プラーナ)を失うと、身体は死体に還ります。主の最高の帰依者にとって、一瞬たりとも主から隔絶された場合、それは深い心の傷として残ります。主から隔絶された人間の目には、この世界の何が喜びとして映りましょうか?」

クリシュナをパラマートマとみなしたアルジュナは、ずっと主のことを考えていました。すべての行動、呼吸、瞬間において、彼の考えは完全にクリシュナを中心に据えていました。彼が主から離れるようなことは一瞬たりともありませんでした。一瞬でも彼が主を考えることができなかったり、主の姿が見えなかったりしただけで、彼はすっかり落胆していたでしょう。そのような事態に見舞われた瞬間、彼は自分自身を単なる生きた屍とみなしたでしょう。

アルジュナは続けました。「ドラウパディー姫のスワヤムバラ(花嫁による新郎の選択)の間、ドゥルパダ王からの招待を受けてそこに集まった王子たちの多くは、傲慢で、下心を持って、ドラウパディーに目をつけていました。主シュリ・クリシュナの恩寵があったからこそ、私は彼らのプライドと輝きを打ち消すことができました。主の恩寵があったからこそ、私は首尾よく弓を引くことができ、マツヤ・ヤントラ(魚の眼)を射抜き、ドラウパディーとの結婚を手に入れたのです。しかし、主は今や私の元から去って行かれたのです。

シュリ・クリシュナの類まれな存在が私にエネルギーを満たしてくださっていました。そのエネルギーのお陰で、インドラ(天の主)が率いるすべてのデーヴァタを撃退し、カーンダヴァの森を主アグニに差し出すことができました。しかし、今や主は私の傍にはおられません。

シュリ・クリシュナはヤマ神の恩恵により素晴らしい彫刻を備えた優美な王宮を私たちのために建築してくだいました。その王宮は、お兄様がラージャスーヤ・ヤグニャを行った場所であり、そこでは世界中の国王たちが集まり、お兄様に敬意を払いました。しかし、そのシュリ・クリシュナの姿はありません。

シュリ・クリシュナのご威光のお陰で、一万頭分の象の力を持っている敬虔なビーマは、何千人もの王たちを従属させていた強大なジャラーサンダを倒すことができました。 主の恩寵があったからこそ、ビーマは、ジャラーサンダによってバイラヴァ・ヤグニャでの生贄の目的で捕虜にされた王たち全員を解放することができました。しかし、もうその主の姿はありません。こうして解放された王たちはお兄様のラージャスーヤ・ヤグニャ中に感謝の意を表しました。

兄よ! ラージャスーヤ・ヤグニャ中に、あなたの妻の髪のためマハー・アビシェーカの儀式が執り行われました。その後、賭博をしている際に、不道徳な男たちは彼女の清潔な髪に触れ、王室の皆の前で彼女を侮辱しました。その時、彼女はすすり泣きながら痛ましくクリシュナの足元に崩れ落ちました。シュリ・クリシュナは、戦争で不道徳なこのカウラヴァの男どもに死がもたらし、彼らの妻たちの髪がほどかれる結果となることを約束なさいました。そのクリシュナはもういません。

私たちが追放されていた時、ドゥルヨーダナは私たちに聖仙ドゥルヴァーサと一万人の弟子たちを私たちに預けて大問題に陥らせました。丁度その時シュリ・クリシュナは私たちの家に着きました。シュリ・クリシュナは私たちを守るために、捧げられた食べ物を少し召し上がりました。この行為だけで、主はドゥルヴァーサと彼の一万人の弟子の飢えを和らげ、三つのローカ(存在の次元)すべてを充しました。シュリ・クリシュナのために食べ物が捧げられてなかったなら、私達は大賢者ドゥルヴァーサに呪われていたでしょう。このように私たちを守ってくださったシュリ・クリシュナは、今私たちの元にはおられません。

主シュリ・クリシュナのご威光によって、三つ叉の矛(トライデント)をふるうシヴァ神との戦いで、妻パールヴァーティを同伴したシヴァを仰天させることができました。主シヴァは私にパーシュパタという武器を与えて祝福してくださいました。お力添えをくださったクリシュナは私たちの元を去りました。

私の親愛なる兄よ、主の影響によって、世界の守護神たちが自分の武器すら私に手渡しました。シュリ・クリシュナの恩寵により、私はこの身体のまま天国まで旅をし、インドラの王位の半分を得ることができました。シュリ・クリシュナのような方は、他にはいません。

私が天国の天人の庭でくつろいでいたとき、主インドラはデーヴァタの大軍を引き連れて私の領土内に退避場所を求め、悪魔ニヴァタカヴァチャを殺すように私に懇願しました。私はガンディーバの弓を使って、悪魔をすべて殺しました。主の恩寵のお陰で、私は悪魔たちを撃退することができました。しかし、最高の主パラマートマは、私を欺いて行ってしまいました」

私たちが完全に悲しみに打ちひしがれているとき、主が私たちを欺いたと言います。あたかも主に責任があるように思いますが、実はそうではありません。それは主への風刺のこもった賞賛(ニンダ・ストゥティ)です。 パラマートマが我々にそのように話させるのは、深い愛情です。私たちは子供たちを叱っていますが、私たちが彼らに対して使っている厳しい言葉には怒りが含まれません。この風刺のこもった賞賛はそれに似ています。

「私は、ビーシュマのような巨大なクジラが棲む、想像を絶するほど深く、広大で、横断することが不可能だったカウラヴァ軍という恐ろしい海を独力で泳ぎ渡ることができました。私の保護者であるクリシュナが私の側におられたからできたことです」

ダッタ ナーラーヤナ ダッタ ナーラーヤナ

続く

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