シュリーマド・バーガヴァタム 第57話
更新日 : 2018.9.5
カテゴリー : シュリーマド・バーガヴァタム
正義の主ダルマは、保護を申し出たパリクシット王に話しました。
「献身と崇高な性質によってパーンダヴァは主シュリ・クリシュナに非常に親しくなり、主に公使などの職務を任せることができました。
切実に保護を求めている生き物に保護を提供することは、パーンダヴァ出身者であるあなたにふさわしいことです!
私たちは、哲学的な問題について様々な意見を主張する哲学者たちの学説のせいで惑わされますが、私たちの問題や困難すべての根本を突き止めることはできません。これは、パラマートマについての完全な知識が不足しているためです。
偉大な聖人たちは、私たちが経験する喜びと苦しみのすべては私たち自身に責任があると述べています。経験した喜びと悲しみは、過去の行動の結果だと明言する人たちもいます。幸福と悲しみはひとりでにやって来ると信じている人もいます。マインドと知性では把握し得ないパラマートマが、人間が被るすべての快楽と痛みの原因であると言及する哲学者たちもいます。
崇高なる王よ!今、あなたはこの問題について熟考し、知性を使い、ご自身のために何が正しいか判断してください」
ダルマから告げられた言葉を聴いて、パリクシットは悲しみすべてから完全に解放されました。そして落ち着きを取り戻しました。マインドを集中させてダルマを見つめ言いました。
「ダルマ(ダルマジュナ)の支配者よ!正義の規則に準じる地獄での罰は、不道徳な行為に耽った悪者を待ちかまえ、この悪者のうわさをする人々をも待っています。あなたはこれらの規則の詳細もご存知なので、とても巧みな描写をされました。これらのことから、私は、あなたが実は雄牛の形の姿をとって今ここに出現された正義の主であると断言できます。
幸福と苦しみの根源を探り当てることができないという言説は、少なくとも私を驚かせるものではありません。なぜなら、いつ誰に、至高の主の恩寵がもたらされるか、あるいは、誰がそれによって幻想に陥るのかは、知り得ないからです。神の幻力(マヤ・シャクティ)の影響は、マインドを使っても把握することができません。言葉でも経験することはできません。
聖仙たちは、苦行(タパス)、潔白(ソウチャ)、慈悲(ダヤ)、真実(サティヤ)がダルマの四本の脚であると明言されています。心酔、悪との結託、傲慢さなどの不道徳(アダルマ)の様相は、苦行、潔白、慈悲を破壊します。私はそれらがあなたの四本の脚のうちの三本を壊したと思います。
今やあなたの四番目の脚、すなわち真実(サティヤ)だけが残っています。多大なる努力によって、あなたはその一本の脚で立とうとしています。真実と呼ばれるこの第四の脚を通じてのみ、人間はあなたに到達することができます。
しかし、不道徳の化身であるこのカリ・プルシャは、真実というこの脚を壊すために尽力しています。
主シュリ・クリシュナは雌牛の姿として現れているこの母なる大地の負担を軽減しました。彼女は今、彼女の体に主の足跡が残っているため、吉兆な姿でまばゆいばかりに輝きを放ちます。
主が彼女から離れた今、この母なる大地は、ブラフミンと諸聖典を軽視し、彼らに適用されるダルマの法則(スワダルマ)を破棄する王たちによって支配されることを嘆いています。彼女は彼らに弄ばれることを嘆いています。こういった理由で彼女は泣いています」
このように、パリクシットは、ダルマと母なる大地を慰めました。不道徳を破壊する目的で、彼はカリ・プルシャを殺すために剣を振りかざしました。
パリクシットの殺気を感じたカリは、恐れて震え始めました。すぐに、彼は着ていた王の服を脱ぎ捨て、王の足元に頭を垂れて、彼への服従を申し出ました。
パリクシットは、その慈悲と避難場所を求める人々に保護を提供することについて評判がありました。この性質に忠実なパリクシットは、慈悲の心からカリを殺しませんでした。その代わりにパリクシットはカリに微笑んでこう告げました。
「アルジュナと同じ名声を得ている我々の保護を求めているお前はもう絶対に何も恐れる必要はない。それでもやはり、不道徳と密接に関係しているお前は、どんな状況であっても私の王国に住むべきではない。
お前が王の身体に入る時、不道徳(アダルマ)な特性、例えば、強欲さ、不誠実、他人の財産を奪うこと、悪い行い、守るべき規則を破ること、不正行為、貪欲、喧嘩、ダルマに従っているふりをすることなどといった悪い特性によってその人は操られるのだ。それらの悪い特性がその人をアダルマの道を歩ませるのだ。
不道徳な友よ!お前は正義と真実が優占するブラフマヴァルタの聖地に住むことは許されない。ここには、ヤグニャ(犠牲の儀式)の技術についての深い知識を持っているヤグニャ学派の提唱者が住んでいる。彼らはヤグニャの霊媒を通じて至高の主ヤグネーシュワラを崇拝している。
ヤグニャの霊媒を通してこのように崇拝される至高の主は、彼らの願望を満たし、彼らの幸福を保証する。空気のように、すべての生き物に宿る自己(アートマ)である主は、生物と無生物からなる創造物の内にも外にも全てに行き渡っている。
命令口調で話していたパリクシットは、死の主ヤマのように見えました。このような彼を見て、カリは激しく震え始めました。
パリクシットに向かって、カリは言いました。
「なんと偉大なる皇帝でしょうか!あなたの命令に従い、私がどこに住もうとも、その弓と矢で私と戦う準備ができているあなたの気配を感じます。ですから、その慈悲のお心で、私が今後どこに住むべきかを教えてください。
私は不誠実の重荷を背負います。私は悪い習慣すべてに手を染めています。どこで私は生きるべきですか?あなたは私をこの場所から追い出そうとしています。私が自分の影響力を強めようとどこに行っても、あなたが先回りをなさって、私を取り押さえる準備ができていることを知っています。弓と矢を装備した王は、私の眼前に現れ、私を殺す準備ができています。
今後どこで生きなければならないか教えてください。あなたの命に従い、私はその地に永久に住み続けるでしょう」
パリクシットは、カリの懇願を聴いて、賭博、飲酒、売春、動物虐待が日常的に行われている各地域に住むことを許可しました。彼にはこれら四つの地域が割り当てられました。