シュリーマド・バーガヴァタム 第232話
更新日 : 2024.6.11
カテゴリー : シュリーマド・バーガヴァタム
「輪廻転生(サムサーラ)という海は、五つの感覚器官、そしと心という六匹のワニから出来ています。ある人たちは、厳しいヨーガを行ずることによって、輪廻転生を克服せんと熱望します。その人たちは、イーシュワラという船頭に救いを求めようとはしません。彼らがこの海を渡り切るのは、ほぼ不可能です。ですから、主シュリハリの蓮華の御足という大船に乗って、この恐ろしい海を渡ってください。そうでなければ、輪廻転生の海を抜け出すことはできないのです」と、ブラフマー神の心から生まれた息子サナト・クマーラ・マハルシは言いました。
このように、サナト・クマーラ・マハルシは真我の叡智を説きました。プリトゥ王は、聖者の栄光を大いに称えて言いました、「おお尊敬する大聖者よ!弱き者に哀れみ深い主シュリハリは、過去において、すでに私を祝福してくださっています。しかし、今、あなたが教えを授けてくださったことで、至高の神の恩寵が私の中で完全に流れでいくようです。
あなたは、このうえなく尊敬に値するお方です。そして、非常に高い領域に到達しています。この肉体を含めて、私が所有するものは全て、神が祝福として私に与えられたものです。ですから、私は、あなたに何を捧げることができるのでしょうか?おおマハトマよ、私は、私の生命、妻、子供、財産、宮殿、王国、軍隊、土地といった、私の全てをあなたに捧げます。
最高司令官の地位に就いて、罪人の処罰と王国の統治を行い、正義を生きるのにふさわしいのは、ヴェーダに精通した学者だけです。また、三界のそれぞれを統治するのにふさわしいヴェーダ学者だけが、自ら蓄えた富から食物を得て、衣服を身にまとうのです。そのような人は、自身の富や名声とは関係なく、分相応の食物を食します。そして、彼は己の財産を慈善事業に寄進し、運命が定める衣類を手にします。一方、クシャトリヤやその他の階層の人たちは、こうしたヴェーダに通じたブラフミンの祝福を受けた時のみ、贅沢や快楽を享受するのです。
おお偉大な聖者方よ、あなた方は、どんな状況にあっても、無限の哀れみの心を示されます。ヴェーダにも精通しています。あなた方が私を訪ね、至高の叡智の本質を伝えてくれたことこそが、私の幸運です。あなた方は、私に霊性を教えてくれました。このように、私に救いをもたらしてくれたのです。私へ示された救いのその御手が、あなた方に大きな喜びをもたらしますように!
私には、合掌して、敬意のお辞儀をする以外には、あなた方に捧げられるものはありません。私だけではありません。あなた方が示されたご親切や救いの御手に報いることができる人など、誰もいないのです。あなた方に報いようとするのは、おどけ者でしょう。」
それから、プリトゥ王は、真我の叡智を熟知した四人のクマーラ・マハルシの名誉を称えました。そして、聖者方はプリトゥ王の立派な人格の栄光を称えて、人々が見守る中、天空の道を通って出立しました。
ヴェーナの息子プリトゥ王は、偉大な人格者の中でも、とりわけ偉大な存在です。王はサナト・クマーラ・マハルシが説いたように、真我の中に自らを確立しました。そして、完成と解放を獲得したものを信じました。
プリトゥ王は、自らの経済力と体力を限りにおいて、また、時と場所の許す限りにおいて、神への全託の精神をもって、善行を行い続けました。そして、その行為の報いを全て、神に捧げました。また、「私がこれをやったのだ」と思うこともなく、完全なる集中力をもって、やるべきことを行いました。
プリトゥ王は、肉体、感覚、心を超越した目撃者のようにあり続けました。王国は、豊かさに溢れていました。それでも、王には、自我意識の感情はありませんでした。王宮のあらゆる贅沢の中に身を置きながら、家住者として生活していましたが、プリトゥ王は、そうした一切に執着することはありませんでした。超然とした太陽のように、プリトゥ王は、あらゆる感覚的快楽とは無縁でした。そして、真我に確立しつつ、聖典が規定する行為を忠実に行いました。
プリトゥ王は、妻アルチとの間に、ヴィジターシュヴァ、ドゥムラケートゥ、ハルヤークシャ、ドラヴィナという五人の息子をもうけました。主シュリハリの部分的顕現であるプリトゥ王は、あらゆる守護神の善き資質の全てを自らの中に備えていました。そして、この宇宙の生命体の全てを守護しました。
薬草の神である月は、ソーマヤージとして知られています。プリトゥ王は、月の如く、あらゆる人たちの幸福のために常に心遣いし、その立派な才能で喜ばせていました。そのため、月に次いで、すばらしい王であると言われていました。
太陽は、蒸発と凝縮の過程において、大地から水を吸収し、雨として降らせます。同様に、勇敢なるプリトゥ王は、大地からもたらされる食用穀物を税金として徴収しました。そして、国と民の繁栄のために税金を使いました。
忍耐力において、プリトゥ王は、母なる大地に匹敵します。天界が欲望という欲望を実現するところであるように、王は民のあらゆる願望を実現しました。雲は適切に雨を降らせて、大地に生きる人たちを満たします。同様に、プリトゥ王は、人々の願いに応じて、彼らが富を受け取ることができるようにしました。このようにして、人々を満足させたのです。
海の深さを知ることはできません。同様に、プリトゥ王の心の深さを計り知ることはできません。勇敢さにおいて、王は、大変なプレッシャーの中でも動じない山のようでした。罪人を処罰する時には、死神ヤマ・ダルマラージャのように公明正大かつ理性的でした。プリトゥ王は、ヒマラヤ山脈のようにすばらしい王でした。そして、クベーラのように、尽きることのない富を所有していました。また、将来の計画が適切な行動の段階に進むまで、そして、そうならない限りは、計画を明かすことはありませんでした。秘密厳守においては、ヴァルナ神のようでした。
風は生命力となって、あらゆる生命体を支配します。そして、その心、肉体、感覚にも活力を与えます。
同様に、プリトゥ王は、自らの精神、肉体、感覚の力ですべてを支配しました。
プリトゥ王は、無限大に光り輝いていました。ルドラ神のように真我の中で輝いていたのです。美しさおいて、彼は欲望を司るマンマタ神のようでした。足取りにおいては、獅子のようでした。臣民への愛情という点では、スワヤンブヴァ・マヌに匹敵しました。そして、ブラフマー神のように国を統治しました。
ハライェー・ナマハ